「何かを愛しているなら、怒らなくっちゃいけない」
相手に非があれば、愛するものを守るために、
躊躇(ためら)うことなく怒らなくてはならない、ということらしい。
この言葉、白洲正子さんのエピソードとして新聞記事に出ていた。
それは、
かの料理研究家であり陶芸家として伝説の人物となっている北大路魯山人との
一件で語った言葉とされる。
白洲さんが魯山人に着物のデザインを頼んだところ、
全面的にゴテゴテ、サクラが描かれていたという。
「ちょっと待ってくれ、あなたがサクラ好きなのは知っているが、
そればかり、こんなに描くのは、作者のエゴ
康泰領隊。
趣味を押し付けてはいけない。それが日本の美ってもの。
私、ぶん殴ってやったわ!」と手厳しい姿があった。
実際に魯山人は、無類のサクラ好きだった。
あるとき、鎌倉にあった自宅に客を招いて花見の宴を開いた。
外での花見ではなく、
一本の大きな桜の立ち木を家の中に移植し、その下で料理を振る舞ったという。
サクラ好きもここまで、と思わせる豪快さだが、
それをやった人物はほかにもいる。
遥か遡ること七百年。
室町時代にバサラ大名として知られる佐々木道誉(どうよ)が、
同じく家の中に桜の立ち木を活け、その下で大茶宴を開いている。
道誉は、そのような金満な茶会を催したことで同様な、
顰蹙(ひんしゅく)を買っている
nuhart植眉。
だけども、何と言われようと、
派手、奇抜、豪華趣味といった婆娑羅の
ゴージャスな、ライフスタイルは終生変わらなかったようだ。
『太平記』の中にこの佐々木道誉の行動が出ているが、
権威を振りかざすものを嘲笑しつつ
粋に振舞っている姿として描かれている。
彼の行動を分析してみると、ちょっとむずかしい表現だが、
非難される者としてよりは、非難する者としての行動だったようだ
威尼斯旅遊。
ことによると、これこそ、
愛するものを守るための、怒りの行動だったのかも知れない。